アーカイバの光と影
本日ツールの更新を調べていたら
復元プロジェクトの’詩子様’が更新されていました
久々の更新と思い,公式ページを訪れてみると
「この更新を最後に無期限停止します」とのことでした
これで偽装解除のプロジェクトは事実上,すべて凍結という形になります
唯一更新を続けていただけに残念という気もしますが
その頑張りに敬意を表したいと思います
思えば2年前。私がまだパソコンにあまり詳しくなく
インターネットの知識も浅かった頃
すでに裏の世界では様々な偽装が氾濫していました
その偽装を解くには偽装元のツールが必要だったので
ダウンロードしても偽装が解らず泣く泣く諦めていた人もいるでしょう
そんな時,「様々な偽装を1つで解除できるようなツールがあると便利だ」
ということで始まったのが「復元プロジェクト」だったのでしょう
開発当初は開発者側の思考と興味で作られていたのですが
一般公開するにつれ次第に使用者側の希望から
開発が進められるようになっていきました
元祖復元ツール’らるち〜’もその一つでした
もともと’偽装’は裏の世界で
元のファイルが簡単に見付からないようにと開発されたのが始まりです
新たな偽装形式が次々と増えていくのに対し
’復元’ツールも開発が進めらていきました
開発終了した’らるち〜’の後継機となるよう開発された’Malty’
多大な偽装形式にも負けず対応数No.1を誇った’Melt it !’
ドラッグ&ドロップで新しい形式にも対応した’そ’,’支天輪’
そしてプロジェクト最後まで残って開発されていた’詩子様’
これらは開発者側の思考錯誤と努力の結果生み出されたものです
その努力は並大抵のものではありません
私もプログラムを組む端くれの人間ですから
普段自分が何気なく使っているツールが
どれほどの苦労を重ねた結果か,ということが少しくらいは理解できます
「理解できる」と言うよりは「理解しているつもり」なのかもしれませんが…
これらのツールは偽装が多様化していく裏世界では
基本かつ重要視されてきました
しかし21世紀の初めに新しいタイプの情報交換技術が生み出されました
それが’Napster’,’Gunutera’,’WinMX’などの
P2P型の交換ソフトです
これらはネットに繋ぐことで,同じようにネットに接続している他者から
欲しい情報,データをダウンロードするというものでした
これらの出現により,裏世界では大きな変化が訪れました
それこそ産業革命のように……
今までのように偽装,復元といった面倒な作業が不要になった上
リスクが大きかった従来の方法に比べ非常に楽になったからです
元々’Napster’,’Gunutera’は音楽交換を目的に開発されたものでしたが
’WinMX’は音楽以外のデータも交換できるため
犯罪まがいの交換も行われているようです
そうやって初の逮捕者が出たのは,つい先日のことです
しかしこれらの交換ソフトの占める割合はどんどん増えていくことでしょう
この結果,’詩子様’の開発者様は
「これからこういった類のツールは必要とされないでしょう」と判断し
開発の打ち切りに踏みきられたようです
時代は常に進歩している---。その通りです
新しいものが入ってきたときは,必ず古いものが消えていきます
インターネット初期は「出せば儲かる」といったイメージがあり
様々な分野において広がっていきました
しかし今ではそのネットの世界でさえ淘汰があり得るのです
今回の事例もその一つに過ぎないのです
時代のニーズに受け入れられたものによって
存在意義が消えようとしているのです
それは時代の理から言えば仕方の無いことかもしれません
しかしネットの一時代を築いてきたことは確かなのです
私にとって「ツール」とは,たった2年間とは言え
慣れ親しんできたものです
もはや切っても切れないものとなっています
だから開発が凍結し,このまま風化していくというのは
あまりにも寂しいことのように思えます
これらの便利なツールを開発してくださった方々に感謝すると共に
この場を借りて御礼申し上げます